さくら/
草野春心
さくら、
きみは花ひらき
したたかに水面を染めてゆく
さくら、
もうきみの匂いがする
春が運んでくる
忘れかけていたものたちを
そっとひとかかえにして
この国にも
きみの咲かない街がある
あるいはそれどころか
誰もいない街
ぼくたちは
そこにきみを届けてやれない
ぼくたちは
不器用な生きものだね
さくら、
きみを憶えておく
せめて誇り高く生きるために
悪意に
痛みに
天災に
事故に
妄執に
虚飾に
嫉妬に
弱さに
もう二度と屈しないために
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