空と川(火)/木立 悟
空から川へ
融け落ちる途中の樹が
水面で動きを止めている
野のむこう
そぞろ歩きの雨曇
穏やかに酷く
匂いのひかり
壁づたいに
曲がりゆく影
川から海へ
川から海へ水を梳く
ひとつの手が
ひとつの手を押す
光の上に
蒼を着る蒼
焚きしめることなく焚きしめて
目を深く
閉じて
鳥の棲み処に触れ
目も頬も手も鳥になり
夕暮れが来るまで遊んでいる
聞こえることなく 騒がしく
明るく
音だとわかるかたち
空を最後の色と持ち
道を斜めに斜めに上げる
音へは音を落とさぬかたち
騒明を騒明に拾い
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