美しい舟/
はるな
すべてのことを
いくら波が穏やかでも
それがすべてだとは限らないのだ
一艘の舟で
どうやって陸を進もう?
舫われるべき岸辺もなく
たくましい足もなく
奪われる美しさもなく
手放すことと
奪われること
失うことが
それぞれべつものであることも
もう知っている
目を閉じると
とても美しい舟があって
でももうそれに乗ることはない
舟が
骨のようにわたしのものになったから
遠くまで来たことを知る
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