美しい舟/はるな
 

すべてのことを
いくら波が穏やかでも
それがすべてだとは限らないのだ

一艘の舟で
どうやって陸を進もう?
舫われるべき岸辺もなく
たくましい足もなく
奪われる美しさもなく

手放すことと
奪われること
失うことが
それぞれべつものであることも
もう知っている

目を閉じると
とても美しい舟があって
でももうそれに乗ることはない

舟が
骨のようにわたしのものになったから
遠くまで来たことを知る


戻る   Point(4)