美しい舟/はるな
 
目を閉じると
とても美しい一艘の舟があって
遠くまで来たことを知る

あなたを欲しがることと
あなたとの時間を欲することが
べつものであることも
もう知っている

舫われるべき岸辺にはあなたが立っていて
その美しい骨は舟のようだ
背中は海のようにすべらかに広く
悲しいものを見届けるために静か

時間がいつでも宝石のように繋がれるものなら
だれもこんなところには漕ぎ着かない
そのかわりに
舟がこんなに磨かれることもなかっただろう

遠くまできて知ることは
何かを欲することと
それを所有することが
まったくべつものであるということ

ちゃんと感じたい

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