標をすぎて/木立 悟
 


雨を吸った荷を枕に眠り
どこまでも開きつづける羽を夢みる
左側だけが蒼い羽
鍵を持つ手を戸惑わせる羽


いさかいの火に
月は燃え 雲を吐く
ただの黒へ ただの黒へ
鳥は沈み 夜は沈む


別の歌を呼び続ける笛
常に鳥を追い求める笛
けだものと同じ姿の闇が
鉄の光を背にして近づき
蒼い鍵を揺らしつづける


空の手をすぎ
鳥は飛び去る
原の上の偏光重星
独りのための道の行く手に
水の火のようにゆらめいている




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