焔洋 / ****'04/小野 一縷
 
臭気が脳髄に向けて心拍速度を司って
脊髄を螺旋に取り巻きながら上昇する


「見える」



「これは 眩しい 熱だ」



蝋燭の陽が 身体中の甘い暗黒の中真に 次々と灯ってゆく



眩しい

温かく眩しい

柔らかく眩しい

これは 皮膚感覚上の美の構成経過だ

呼吸する火の集まり 焔は ここに生きている

熱は なんて強く精密な優しさを持つ事態なんだ

細胞同士が伝達する微量電子信号の過流元素単子間にすら 
熱は小さく永遠に脈打っている 


遠く小高い丘から 燃える 無人の街を 眺めていたい
膨大な熱の量 広大な熱の放射 遠く深い 朱色の純度
夜をずっと濃く焦がす 焔上の陽炎が揺らす 夜空の影絵のあらすじ
胸打たれて 潤む目の 丸い艶の上に 真円の漣紋を 次々打って 
映って滲んで もっと緩やかに 揺れてゆく 焔 夜の遥洋まで ずっと続いて 









戻る   Point(5)