戻り涙/木屋 亞万
 
きっと
悲しくなんかないはずだ

もしもそれでも悲しみが
湧き出てきたら
そのときは
みんなでそれを朝飯の前に
ぺろっと食べれば良い

なかなか癒えない悲しみを
言えないままで秘めている
溜まった涙の奥底にある
言の葉をさらってみよう

悲しみの多すぎる水分を
出し切ることができたなら
言の葉の火で心から
身体をぐっと温めて
気球のように
春の空
飛んでみようよ

耳元で
また笑う声
聞かせてほしい
戻る   Point(1)