自殺しないための装置/吉岡ペペロ
そこが人生の得意時であろうと
ロックンロールがなくなることはない
鼓舞でもない
牧歌でもない
癒しでもなければ
自傷でもない
それはただの
自殺しないための装置だ
サンミゲルをラッパ飲みしながら
いつの間にかスラム街を歩いていた
失意を演出するような
怠惰と自棄をまとって歩いていた
廃線のまわりにはバラックが並び
カラフルな洗濯ものが高く乾されていた
子供たちがちいさな社会をつくり遊んでいる
そこからこぼれた少女は
汚らしいぬいぐるみをまとって屈んでいる
バラックのなかをなにげなくのぞく
暮らしの影がひっそりとしている
たぶんラジオからだろう
ロックンロールが聴こえてくる
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