千秋楽/かいぶつ
ごく普通の女の子だったこと。
花火が止んでしまい
私は急に痛めた右足の存在を思い出し
バランスを崩して、地面に埋め込まれたタイヤの跳び箱に
尻もちを付いてしまう。
「今年もサーカス、終わっちゃったね。」
「うん。」
さっきまで泣いていたじいさんが
笑顔を取り戻し小さく拍手をしている。
「来年も来るやろか。」
「ぜったい来るよ。」
「来年は必ず観に行こね。」
「 うん。 じいさんも一緒に観に行こうよ、サーカス。」
じいさんが、まだ小さく拍手をしながら
「うん。」
と力強く、頷いた。
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