3月/番田 
 

最寄り駅にたどりつくと 私は どこにも行く先などなかった
私はまるで 純粋な少年のような 真っ直ぐな瞳をしていた
長い 長い 時の流れの中で
街の風景だけが いつも 輝いていた
手にしたものなど 本当に わずかだった
エントランスの向こうに向かって 私は ぼんやりと歩いていった


この世界だけが なぜか とても輝いているように思えた


ハチ公前のスクランブル交差点を歩きながら 考えた
一人の人間にできることなど限られているのだろう
この震災が意味したものは 人間の心の醜さだけ
きっと 多くの人々の心は 踏みにじられてきた


そして今日も 憎しみの涙を流さ
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