はつかねずみ/ふるる
いいかな
リンゴ、ブドウ、クリ、ナシ、クルミ
おいしそうだから食べられちゃう?
お茶をいれて飲もうか
それとも
雲でパンでも
つくろうか
眠いのなら
ぼくはずっとゆすってやろう
鳥やリスといっしょに
ボートに乗る
晴れやかで
ガラスのような日に
あかんぼうが生まれた
その一息一息は
あんまり清らかで
雪が顔を赤くしたくらい
元気な泣き声
きみにそっくり
あかんぼうをくるもうよ
大地が雪で
すっかりくるまれているように
剣や弓も
その前では眠ってしまう
たくさん眠って
たくさん泣いて
それはぼくらも
変わらずしている
きみの美しい視線が
ぼくをまっすぐ見つめる時
ぼくはオールをこぐ手を休めて
ゆっくりきみを愛そう
冬ならば
外に出なくても怒られない
そして
また
春が来る
ごくあたりまえに水がぬるみ
花がめまいし蝶がひらき
三人で
ボートに乗る
ぼくが覗き込んだ
きみ
きみの手の中のはつかねずみ
その時はもういない
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