「風の始まり」/ベンジャミン
風の始まりは
そんな熱の高まりからだと知っている
草笛を吹きながら
その始まりに立っている
(草原は静かに燃える)
気流に運ばれてゆく草の音は
枯れ色の野を赤く染めながら
やがて空と地の境界を駆け上がる
それは草笛に託された自分の熱をもはらんで
高く連れ去ろうとする
そのとき
まるで磁石のように
引き合う
言葉たちが生まれて
あらゆるものを近づけようとする
(草原は静かに燃えている)
宇宙は空の果てに在るのではない
今、この瞬間にも
此処に在るのだと
赤く広がる草原に
草笛の音は燃えている
そして風は
始まりに向かって吹いている
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