夜言花/木立 悟
背中に入り込んだ紐が
誰かに引かれて灯る羽
骨のあたりでちらちらとする
虫のあつまり
綿のあつまりのような光が
鉄の柱とともにつづいてゆく
追う音の少なく
見る音の多い空
夜は四つの帰路を歩む
光はうなずきながらずれてゆく
すぐそばに居るのに見えなくなり
葉と雨のにおいをくりかえし
路から路へとひろがってゆく
行く手の空には艶やかな花
暗雲の眷属にちがいない
空き地を掘り起こす機械の唱
町に柱に響きわたる
花は渦に消えてゆく
羽は森と窓を照らす
連なる音はすべて途切れ
空を見上げる視線に昇る
夜の晴れ間の光は降りて
屋根の雨水を飲んでいる
舌先と水紋との会話には
数多くの花が眠っている
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