けもの森の囚人/木立 悟
むらさき みどり
平たく 平たく
抜き差すみどり
かたまりでないもののかたまりと
小さなものとの歩みから
こめかみの角 ひたいの角
遠すぎる稲妻の色の無さ
心が何も無い場所に
水がやって来るときの
小さな音と
まぶしさと
雨の鹿
雨の鹿
野の境まで
響くひとつ
とどくようでととどかない
そのまぼろしにいつまでも
とどかなくていいと言えないでいる
ふりではないふり ふりのためのふり
朝のはじまりにじくじくと
流れやまぬ夜 流れやまぬ夜
星はさみ風はさむ指を振りきり
どこかへどこかへ どこかへと吹く
四歩しりぞき
雪に沈む灯
水辺の木の家
夜に灯る手
双つの想い
稲妻に手わたし
やがて降り立ち
けもの森となる
文字の檻が
蒼に倒れ 火に倒れ
うたうものは放たれる
激しく咲くものは放たれる
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