けもの森の囚人/木立 悟
水は降る 冬は降る
銀と灰と
誉れなき晶
午後は降る 午後は降る
右手で右手をしぼり
流れ出るのは同じ色
痛みに混じる
あたたかさ
ななめうしろ つややかな
何もないものを受けとめる
灰のなかの銀
鉛と白と 骨のうた
眠りに咲き 花に飛ぶ
指さす先の夜 遠さの遠さ
同じく異なる場所にくちづけ
数日遅れの星のつぼみ
波のかたちが音に重なり
差異の里は三つ子に巡る
手と手と手と手と
手に巡る
音の棘の冠が
曇を水へ水へと降らせ
るらるらと るらるらと
水たまりの羽かえしゆく
白へ白へ
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