視界を選ぶ/殿岡秀秋
叔父がつくってくれた
平べったい玉子焼きをたべてから
小学校にでかける前に
ぼくは儀式をはじめる
父と母がまだ寝ている四畳半の寝室をすこしあけて
二人の寝姿を視野におさめる
それから目を半分つむりながら
ふりかえってあるく
そのまま玄関まで行こうとする
柱にぶつかるといけないから
両手を前に
杖の代わりにのばす
つまずいて
うっかり眼をあけてしまったときに
視界に叔父がはいってしまう
ことがある
父母の寝室をあけなおすところから
やりなおしていたら遅刻になるから
仕方なくそのまま出かけると
その朝は気分が悪い
小学校へ行くときの
毎朝の
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