Doors close soon after the melody ends/カワグチタケシ
者は火で焼かれ
水蒸気と炭素になる
別の者は土に埋められ
昆虫やバクテリアたちの消化管を通り
土に還る
ある者らは食べやすく刃物で刻まれ
鳥たちの消化管を通り
排泄物になる
残された骨は風に問いかける
そこに愛があったのか、
いまも愛があるのか、と
***
夜空を上昇する
かもめの背中に
雨蛙が乗っている
蘇る変な感じ
太陽を待ちながら
地表の温度が下がっていく
地下鉄の中で
常温の振動に包まれて
君は美しい人を思い出す
その髪は風に揺れている
かつて美しかった
そしていまもおそらく美しいであろう人を
夢を見る気持ちを忘れないように
と
静かな音が通り過ぎていく
銀座四丁目、午後八時
愛があればよかったのだ
と
和光の鐘が鳴る
せめて愛があれば
と
***
雨上がりの街を夕陽が紫色に
染めていく 流れる人の波
雨上がりの湾を夕陽が紫色に
染めていく 揺れる波間に人
発車サイン音が鳴り終わるとドアが閉まります
閉まるドアにご注意ください
閉まるドアにご注意ください
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