子供騙し/光井 新
、三尾の金魚を預からなければいけなくなった。
だけど、うちに来てから二週間経った日の夕方、預かっていた金魚達は死んでしまった。「おうちへ帰りましょう」っていう十八時の町内放送を聞いて、夏祭りから帰ると、死んでいたんだ。買い物に出掛けていたらしくてママはいなかったけれど、後になって聞いた話だと、ママがカルキを抜かずに水を替えてしまったらしいんだ。
どうしよう――頭が真っ白になって、僕はしばらく立ち尽くしていた。すると、仕事から帰ってきたパパが、「今から金魚屋さんに行こう」って僕に声を掛けてくれたんだ。僕が預かっていた金魚は和金っていう赤一色の比較的個性が目立たない種類だったから、似たような大きさの物を買って来て代わりにしてしまえば、金魚を殺してしまった事なんてばれやしないとパパは言った。
二学期が始まると、ピョンスカンの色が白くなっていた。秋毛に生え変わったのだと新井さんは言っていた。クラスメイトはみんな、白いウサギを見て驚いていたよ。金魚を見る子なんて一人もいなかった。
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