ユニコーン/三条麗菜
 
(君の化身に)

真珠色に輝いた
すらりと長い一本の角には
少女のまどろみを約束する香りが
まとわりついていました

背の高い草の
柔らかい茎の笛を鳴らし
少女は聖なる獣と遊びます
早春の木漏れ日が
褐色の肌を点々と輝かせ
脚はしなやかで
草原を大地を蹴って走ります

星たちと友達である獣は
夜になると少女に
星座の名前を教えます
それぞれの星座で
一番明るい星が一つの希望
だからこの世に希望は
無限にあるわけではなく
かといってたった一つでもないと
獣は優しく言うのでした

ある日少女は街へ行き
そのまま帰ってきませんでした

木々を縫う朝
[次のページ]
戻る   Point(2)