調べ/電灯虫
さの中、部屋を右往左往する視界の隅で、
無視したいのに、
心の、ピリっとした泣き始めの声が鳴り響く。
高度成長期の地盤沈下があったのかなかったのか、
自動販売機以外、何にも変わらないオラが街は、
外見以外は変わらない、
見事な世代交代をした名物店主があの日の売込みを再生し、
母と娘との手の端でレジ袋がカサカサとシンバルを刻み、
道端の近所の井戸端会議から漏れる、
噂話のストラディバリウスの年季が入った大声と共に、
故郷楽団が懐かしきパレードを今日もする。
何度何度語られ、描かれても、
小鳥と陽光のデュエットはその素敵さを失わせてくれなくて、
森林が名乗りを上げ、
さざ波もカルテットを申し込んだなら、
緯度と経度を主旋律に、
万感の世界が謳う。
やっぱり、
鼓膜にまかせっきりにせず、僕という存在をもって、
世界の音を聴けるはずで。
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