【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 
たのです。ハミルは窓を開けました。とてもやわらかな雨でした。

もはや血の虹が七つ噴き出ている車のなかで、自分の虹を見るムスカは「見初める」という動詞で描写され、ここにもまた殺され感はありません。そしてムスカへの心配も気配りもなくハミルは「ちがう、その果て!」と、オクリさんしかかけない凄まじい響きを現します。そしてきゅうにてらてらのあとでダイジェストとして、どこへもいけないことに気づき、「とてもやわらかな雨」を見るのです。この、不感症の地獄のなかで、あらわれるこの窓感と雨感のなんという美しさでしょうか。なんという対照なのでしょうか。
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おかあの唄は二人の星を輝かせます、雲も越えて
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