空樹/木屋 亞万
 
しい手の平だったかもしれない

深くひとつ息を吐いて
自転車を起こしたら、手で押しながらトボトボと歩く
誰の言葉も届かないかもしれない時に
欲しいのはやさしく触れてくれる何かで
そんなものが奇跡的に現れるのは物語の中だけ

だからせめて誰の目も気にせずに泣こう
流れ出る涙は止めずに好きなだけ吐き出せばいい
そして疲れたらほんの少し微笑んで目を閉じる
自分の中の濁った部分は涙と一緒に流れ出たのだ

今はもう飛べるほど軽い
くたびれた空っぽのリュックサックのような心で
明日は何かやわらかい荷物が背負えたらいいなと思う
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