世界が始まらないことを願って/木屋 亞万
少し我慢すれば
被害は最小限で済む
そこまでしてその先に何があるのか
何もない
そこに居て良いという契約
居場所
そこで暮らした思い出
自分が住んでいる気配
他人から見られない安全地帯
それから
それから
それだけなのかもしれない
なぜ生まれてきたのか
なぜ生まれてきてしまったのか
親を責めているわけではない
自分を責めているわけでもない
何もかも生まれないまま
何も生まれない世界だったら
とても静かだったろう
そういう世界の静謐に憧れて
今日も静かに
目を閉じる
世界よ、止まれ
決して今の幸福を留めるためでなく
これ以上何も生まれないために
静寂で辺りを満たすために
目を閉じるといつも
燃えるような夕日が見える
さよなら世界というような赤
今日も沈もう
眠りにつこう
明日はきっと
生まれてこない
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