「そして静かに融けてゆく」/ベンジャミン
泳ぎ疲れた感情の波
あお向けに浮かべば空
現実に押しつぶされないように
限界まで吸い込んだ
息をゆっくりと吐きながら
だんだんと融けてゆく
僕は今
一番おだやかな表情で
月のまんまるも恥ずかしがるほどに
裏側に渦巻く感情を黙らせて
この時をむさぼる
飢えに乾きを怖れ
充足に罪を感じても
貼り合わせた僕の表と裏は
こぼれそうな命を包むだろう
やがて夜の闇が侵食をはじめても
僕を奪い去ることはない
数えるのはやめた
同じ場所でくるくる回るのも
水に
空気に
同化して
だんだんと融けてゆく
再びかたちを取り戻すまで
月の輪郭は影を削ってゆくだろう
僕はとてもおだやかな表情で眠るんだ
朝が来るまで
貼り合わせた僕の裏と表が
再び出会う
その時まで
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