梅見のひと/恋月 ぴの
でお弁当の場所は決まってしまい
父は見晴らしの良い席に赤ら顔して陣取っていた
わたしんちだけだったのかも知れないけどさ
お弁当をつまみ飽きた子供たちが騒ぎ出すのはいつものことで
それをいなしながらも箸を休めないお母さんってタフ過ぎる
遠目だと梅なのか桜なのか首を傾げる花音痴だけど
こんなに至近距離なら嫌でも梅って判るわけで
広場の方から女性の歌声が聞こえてきた
テイチク専属らしい売れてない演歌歌手が紹介されて
こんな雰囲気には耳障りというよか似つかわしさあったりする
あれっ、きよしのずんどこ歌ってんじゃんか
俺、育メンやるからさ、おまえ働いてくれよな!
そんな顔した男がほざく
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