花瓶越しの雪ざらめ/関口 ベティ
 
別に何かを求めて彼といる訳ではないのだ。

コルツのどろり甘い煙がすでに雲掛かった部屋へ愛と共に吐き出される、白い幻影。
吐精の済んだ男は深いため息をついてさっさと私に背を向けている。

「豆電落として。寝れないから」

言われるままに明かりを伏せて、ついでに己の股ぐらを覗く。
雪明かりにもてらてらと汚いばかりで、そこに営みの神秘性だけが綺麗に欠落していた。

どれだけ猛ろうと彼に子種はない。
その安堵と拭いようのない寂しさを踏みつけるように、私は彼を喰らい続けてきた。
そしてこの十年来、彼は一度たりと私を見ない。
星のような黒い瞳をしていらいらと欲をぶ
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