神崎川/385
梅雨間近 河原で立ち止まり
異様な臭気の理由を観察する
塾帰りの子どもたちは「死ね!」と罵りあい
おばちゃんたちは井戸端会議ならぬ河原会議中
立派な段ボールハウスの住人は
自家発電テレビの野球中継に夢中
橋の下のカップル 互いの身体をまさぐりあい
意味不明の声にならない声をあげ
高校生は 吸い終わったタバコを
土手になすりつけ また次のタバコに火を点ける
孤独に走るランナー 吐き出した唾
酔っぱらい 飲み残したビール
ケンカ中ちんぴら どろどろ血
ここにいる人間の
複雑怪奇な感情が
毎日この川に
流れ込むとして
いつもと同じ今日が終わり
いつもと同じ明日のため 夜は更ける
空には雲間から 一等星キラリ
(02.05.31)
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