雪原/三条麗菜
雪原の向こうから
聞こえてくるのが
あなたの声と分かります
あなたと私を隔てる
真っ白な雪原では
私の鼓動で雪のひとひらが
舞い上がります
雪の結晶は
科学的な偶然から生まれた
細いガラスの枝を持ち
光を美しく屈折させます
そしてその繊細な形状は
ほんのわずかな熱で
あっけなく溶けて
壊れてしまうのです
あなたの吐息に
含まれる
わずかな熱であっても
私が舞い上がらせた
それはとても壊れやすく
それはとても美しく
それはとても愛おしい
だけど溶けてしまう
みんな溶けてしまう
でも大丈夫
それはもう
いくらでもいくらでも
あるのだ
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