雪原/三条麗菜
 
雪原の向こうから
聞こえてくるのが
あなたの声と分かります

あなたと私を隔てる
真っ白な雪原では
私の鼓動で雪のひとひらが
舞い上がります

雪の結晶は
科学的な偶然から生まれた
細いガラスの枝を持ち
光を美しく屈折させます
そしてその繊細な形状は
ほんのわずかな熱で
あっけなく溶けて
壊れてしまうのです

あなたの吐息に
含まれる
わずかな熱であっても

私が舞い上がらせた
それはとても壊れやすく
それはとても美しく
それはとても愛おしい
だけど溶けてしまう
みんな溶けてしまう
でも大丈夫
それはもう
いくらでもいくらでも
あるのだ
[次のページ]
戻る   Point(1)