【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
出番を待っている大物スター、そんな意味を有する存在である気がする。
『北条』『足利』『満月をしも』といった後期の詩集群と、『北鎌倉』という歌集の、そのタイトルを列記したとき、すぐに了解できるのは彼が美意識の強い人であり、ある美の磁場を有した人であるということであった。また反面そこに隠蔽されている、無味乾燥な観念性が勝った方向性だけの詩を書き、理解を拒絶する冷厳さも併せ持った人であることをも嗅ぎとって、なんだか近づき難い存在でもあると感じていた。それは、石原という個体の避けては通れないラーゲリ体験から発しており、戦後世代にとってはそのことが鬱陶しい障壁となっていることは否めない事実であるように思
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