鳥/salco
も見出せず
もがいている落伍者の窒息を
家を建て 部屋や書籍を買い与えた父母さえも
色褪せた明日という拷問しか用意してやれない
可愛がり 愛しているとさえ錯覚している者達は
訪い来るたび果てしないお喋りに神経の壊疽を養い
ひっそりと片隅で背を向けている少年の
手足を奪われつつある姿にも気付かず
発語先の無い 封印の異国語に耳をそばだてようとは
誰一人 決してしなかった
こうして少年は
静まり返った冬の道を誰にも知られず歩いて行く
誰もが眠っていたのだ 魔法にかかったように
ぐっすりと 日常の続きに身を委ね
うっすらと 土色の繭の中で口を開け
黒い森の下 死んだ嬰児のように安堵し切って
スニーカーに足を入れ ドアを開けて鍵を閉め
ポーチで尾を振る犬の頭を撫でると
未明の短い道を振り返りもせず
少年は歩いて行った
その日から太陽を目にする事も無く
見上げる甲斐も無いほどの その小さな屋上へ
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