かぐや指/salco
精厳禁の戒律とは言え職業軍人以外の庶民生活の中には息づいて
いなかったのです。まさに天下泰平貧乏閑なし、といった時代でした。
「私はね、サイズ直しなんてみみっちい事はしない主義なの」
その言葉にお婆さんははっと我に返り、その時指は、皺だらけの瞼の
下でお婆さんの残存眼球が素早く左右に動くのを感じました。だから察
しの悪い人種に向けて、歌うように付け加えてやったのです。
「捨てるわけにもいかないしね。誰にくれてやろうかしら。お礼って言
うのも何だけど」
こうして養子縁組は円満締結されたのでした。
つづく
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