かぐや指/salco
流星のごとき放物線を描いて降った、20カラットはあろうというその
ダイアモンドには指が付いていたのです。と言うより寧ろ、それは20カ
ラットはあろうというダイアモンドの指輪をつけた指なのでした。
どす黒い腐汁をまとった石が燦然と輝く下で、黄金色の悪臭をまとう指
は、それでもたった今食いちぎられたかのように白く、すべすべとしてい
ます。明らかに女の、恐らくは右薬指でした。
「何だい、びっくりさせやがって気色悪い」
お婆さんは指を拾い上げるとさっそく指輪を外しにかかりました。と言
うより寧ろ、指輪から指を外すのです。
これを売りさばいたら、エルメスどころの騒ぎじゃないよ……。
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