空と雲ーIくんへ捧げますー/……とある蛙
市場の朝は早く寒い
働く市場の軒下から
真っ青な空が広がっている
君の頭上に空があり
野菜の中に埋もれて
汗をかいていた君は
市場の軒の間から
深く青い空を見る
空の青は深く眩しく
君は汗を拭いながら
空を見上げてほほ笑んだ
ぽっかり浮かぶ白い雲
雲はそのうち二つに千切れ
雲はそのうち四つに千切れ
雲はそのうち六つに千切れ
ぽっかり浮かんだ白い雲
一つの雲が消えて行く
雲はふわふわ同じ場所
一つ 浮かんでいるようで
風に流されちりじりに
そのうち六つにちりじりに
空の見える先の先
君は四人の子供の未来を思い
風に流され消えて行く
君はいつでも
あにきーと言いながら
いつもニコニコ風の中
空にぽっかり雲一つ
雲のない空は寂しくて
空の見えない場所は悲しい
君は顔を空に向け
大きな笑顔で伸びをする。
両手を上げて伸びをする。
そして
そのまま空に吸い込まれ
風に流され消えて行く。
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