起算の町/三条麗菜
人は誰も
起算の町を持ちます
流されるまま生きて
それを誇りにしていた時代も
体の衰えと共に
終わりを告げるのでした
とらえどころのない世の中だから
漠然としていながらも
せめて胸を張って生きましょう
そんな言葉もあっけなく
砕かれるくらい
生活に追われてしまうのです
生きるということが
心のありようではなく
まず衣食住であることを
思い知る日が来るのです
遠くで聞こえていた雷鳴なのに
ふと気づけばすぐ近くに
稲妻が走り落雷が起こり
恐ろしさのあまり
地面に突っ伏してしまい
過ぎるかと思えばいつまでも
過ぎないのです
せめて賢く
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