蜘蛛の糸/影法師
 

朝露が滴る蜘蛛の巣に
不思議な世界が見えたような気がして
顔を覗かせると君が居た気がした

「会いたい」と声を出すと
美しい蜘蛛の巣が僕の声を
一文字一文字絡め捕り
現実の世界に言葉を留めてしまう

嘆く僕を見て 蜘蛛は笑う
「それは幻だ」と

笑う蜘蛛を見て 僕は呟く
「これも幻か」と



そんな僕らを見て お釈迦様は笑う
「どちらも夢だ」と

長く 細く 美しい
蜘蛛の糸を垂らしながら


戻る   Point(4)