蜘蛛の糸/
影法師
朝露が滴る蜘蛛の巣に
不思議な世界が見えたような気がして
顔を覗かせると君が居た気がした
「会いたい」と声を出すと
美しい蜘蛛の巣が僕の声を
一文字一文字絡め捕り
現実の世界に言葉を留めてしまう
嘆く僕を見て 蜘蛛は笑う
「それは幻だ」と
笑う蜘蛛を見て 僕は呟く
「これも幻か」と
そんな僕らを見て お釈迦様は笑う
「どちらも夢だ」と
長く 細く 美しい
蜘蛛の糸を垂らしながら
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