鬼ごろし/……とある蛙
足柄山の山中に
(大江山の中腹に)
大きな栗の大木が
その巨木の瘤の中
蔓で編まれた黒い籠
籠の中の麻の布
布に包まれた赤子一人
黒々とした髪を持ち
大きな体に漲(みなぎ)る精気
山々に響き渡る泣き声は
木霊する
山彦する
こだまする
熊一頭が乳飲ませ
子熊二頭を黙らせる
須佐やスサ
スサや須佐 養い子
おまえは誰の養い子
童子の姿は何のため
鬼はお前を憎まない
お前のことなど知りもしない
それでもお前は鬼ごろし
須佐やスサ
スサや須佐 養い子
本当はお前が鬼の子か
お前は本当の鬼なのだ
鬼が涙を浮かべても平気で
鬼の腕をもぎ取って
鬼が苦しみもがいても平気で
鬼の足を引きちぎり
鬼が頭を擦り付けて
懸命に泣き声で命乞い
それでも平気で鬼の首を
引っこ抜く
須佐やスサ
スサや須佐 養い子
お前が本当は鬼の子だ
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