かぐや指/salco
たお爺さんまで腰を抜かしかけたのは言うまでもあり
ません。
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三里も先の町でパン屋を営む実直な甥に言い募って何とかロバと荷車を
借り、お爺さんが獲物を家へ運び帰ったのは真夜中でした。
夜のナイル河畔は真っ暗で、手許の明かりを一歩先で飲み込んでしま
い、どこまでが岸やら見当もつきません。水音で川辺と知れたとて、広大
な葦原のどの辺りに獲物が横たわっているのか尋ね歩くこの足音を、闇に
溶けた不気味な水中から狙いすましている捕食者の、それこそ獲物に今し
も自分がなるやもしれない。
「こんなに腹を減らした
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