列車/茶殻
 
掌に敷設された路線に
死の列車が走る
たくさんの僕が乗り込み
駅がないので誰も降りない


確実な誤差が刻まれて
徐々に列車は下っていく
たまらず僕はめそめそと泣いて
僕の死にフライングをした


川では鳥が探し物をしていた
乳母車を橋の上から投げ捨てると
掌ではたくさんの容疑者たちの生が
その死の腰を抱いてステップを踏んだ


昔サーカスが去っていった橋を前に
僕は木彫りの梟になって欅の枝の上で黙視している
乳母車の向こうには懐かしい日の父と母が居た
線路はやがてバイタルサインの起伏に音も立てず崩れた


生と死が裏返ろうとするとき
掌もまた家族の手により裏返る
囚人たちの選ばなかった橋が
管となり息づいているのがわかる


列車は西日のなかを蛇行しながら
たくさんの僕を車窓から突き落とす
その先 真っ白いタイルの角に
赤い繊維が落ちている

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