月のとびらとうそ/ズー
 
時間の
苦しみの前に
睫毛がどうのとか
親がどうのとか
どの会話にも
季語などなくて
咄嗟についた、うその
ようでした

それは
わたしが
夜のかけらを
集めている間も
途切れないのです



朝になりそこねた
街の光の
ひとにぎりと
わたしのベッドを
午前5時の
月のとびらが
飲み込むように
連れ去っていくと
せせらぎたちは
濃淡の異なる朝を
終わらせる為に
ぶんべんしつで
いきみ始めました



でもね

月のとびら
なんて
本当は
なくて(うそ
ここらへんの夜の
ここらへんの朝に
ベッドは
ちゃんと
あったから
四本足の軋みに
似ている
その声の中で
わたしは
わたしを
毛布に
巻き付けている
うそっぽく
ささやかに
始まる朝に
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