殺風景/……とある蛙
 
荒川の河川敷 土手の下に
古ぼけた木造アパート
モルタル塗らしかった壁の
モルタルは剥がれ落ち
グレーの下地に
枯れてしまった
蔦のツルがへばり付いている

空き家のようだが
夕暮れになると
一部屋だけ行灯のような
淡い明かりが灯る
闇が濃くなる刹那の
一瞬の人影

夜が自己主張する時間には
すべての部屋の窓は
モルタルの剥がれ落ちた
壁と同化する。
さらに暗闇の漆黒の
空気と同化する。

あばら家の
ほとんど道に接している敷地に
ポツンと桜の樹一本
北向きの公道に接して枝を広げる
枝にほとんどつぼみは無く
僅かな日当たりを縁よすがに生きている。

という風景の中に気持ちが沈んでいる
殺風景という風景
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