マヌエラの猫たち/アラガイs
 

真っ暗な闇なんてある筈もない
重しを引きずったまま眠りにつくということ
それは、直線的な光りをも閉じ込めてしまう
と、いうことだろう 。

マルタ島にはマヌエラという男がいて
野良猫が恋人だから結婚はできないと
公園に餌を運んでは一日中潮風に浸り
日射しと呑気に佇んでいる。
缶詰めが開くと船着き場から小さな鳴き声がゆっくりと集まってくる
それでもマヌエラの瞳には
何故か眠るような鈍い光りが屈折して閉じ込められていた 。

佇めば暦の過ぎるのもはやい
晴れた日にはよく口喧嘩になる 。
最近母親が惚けてきている。
年寄りはいつも他人にはやさしく接しすぎると
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