「小さな海で」/ベンジャミン
ひろった貝殻をスコップにして砂浜をほると
そこには少し離れた海とつながる
小さな海ができる
何度かの波の繰り返しで
まるで何もなかったみたいに消えてしまう
小さな海ができる
大きな揺りかごの中に生きる誰もが
きっとそんな夢を見る
ひとりぶんの小さな夢をつつむように
波がさらってゆくのを
儚いと思うのは簡単なことかもしれない
砂浜には
そうやってほられたたくさんの穴が
ひとときの小さな海となって
消えていった跡がある
幼い頃に抱いた夢も
大きな海とつながって
今ではどんな姿だったか思い出せない
小さな海で
今の自分の姿を映して
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