バルコニー/番田
車は止まる事を知らない
携帯電話は鳴らなかった
私は笑っていた
どこに行ったことにするべきだろう
ただただ 眠かった
私は 何もわからなかった
ハンカチをポケットから取り出した
夕焼けだけが 目にしみた
見たことがある 風景画のようだ
それは とても繊細なタッチで描かれた
いつかのフランスの田園風景なのかもしれない
鳥が遠くから旋回してくる
そして 何も 見えなかった
価値のあるものだとは わからなかったけれど
みんな勝手にすればいいと思った
*
誰も もう 君の家にすら行かなくなるだろう
そんな風にしてすべての物事は忘れ去られていく
何もしたく
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