獲物/天野茂典
流れは果てしなく遠い
せき止められて響く音叉
澄んでいる
鏡のように紅葉を映しだしている
流れは流れを呼び
水源地までの距離は測れない
もう戻ることはないのだ
流れは流れていることで流れとなる
浮いたもみじの赤
浮いたもみじの黄
女子大生はナイターでテニスをやっている
うつくしい緑だ
空気が流れる
気が動く
汗が流れる
匂いがする
水を掬う
電気が走る
感電したようなひりひり
獣はいつでも潜んでいる潅木の中に
美味しい獲物を求めて
2004・11・02
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