絵描きと球体の話/相田 九龍
 
絵描きの家には絵筆が数えきれないほどあった
太さが様々な絵筆が ところ狭しと並んでいた
絵描きは嘘をついていた
彼は絵描きではなかった


どこかに球体があった
それはそれは丸かった
その球体は転がらないようだった
幾分か不可解な存在だった



絵描きは女に嘘をついた
たくさんの絵を描くからすぐに筆がダメになってしまうんだ
とてもとてもお金がかかるから だから君に会いに行けないんだ
絵が どうしても好きなんだ
筆が送られてきた



球体は進んだ
転がらずに進んだ
誰かに自分を理解して欲しくて
転がれないけど進んだんだ
だけどそのことで もっと不
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