卵以上/一尾
その国では孵化しかけている鳥の卵に小さな穴を割り開けストローを差すとその中身をずいずい飲んでしまうらしく卵は食べたことがあるし鶏肉も食べたことがあるけれど果たしてその中間とは一体どんなものかしらと空想そういえば幼い頃卵の孵化までのようすを描いた絵本を読んだ目の開いていない血に濡れた将来小鳥になるべきものは殻の中で丸まって安らかに死んでいるようにも感じられこの世に生を受けつつ未だ「生まれていない」という点で実に未完成であるその存在性を静かに私に提示していたように思う
とろりとしているのだろう多分
ストローから卵以上小鳥未満の不可思議な命を吸い込み咀嚼している自分を目の裏側で描きつつ甘いんじゃないか案外それとも血の香りが強いのかしらと味について思案
透明なストローをゆっくり昇るとろりとした命などグロテスクだろうかしかしそういうものこそわたしは見たいような気がしている
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