肌あわせ/月乃助
うすあかりの光りがまだら模様をえがく夜
わたしは、私を忘れる
「風が出てきたみたいだ。梢の影が踊っている。
ここには、街灯はないのだから…」
「月明かりね。風音が変わったのに気づかなかったわ」
「あんなに乱れていたら、気づきようもないだろ。
森をふるわすような声で、鹿たちもびっくりしていた」
「鹿?うそばかり」
「いや、さっき木の実を食べにきていた」
「そんなことが分かるの」
「気配でね。庭の実はもう残りすくないけれども」
「あなたは、肌を合わせているときもそんなことがわかるのね」
「頭の芯が澄んでいくそんな恍惚感に、かえ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)