寓話/AquArium
 
疑問だらけの愛らしきものに
翻弄されて迷い込んだ森の
住人たちは迷惑そうな顔で
見てみぬふりをした


少年は泳げなかった
泳げると言い張って
海を目指してさらに奥へと
少女を引っ張っていった


もう森の入り口が分からない
誰も触れることのない
朿だらけの穴で呼吸した
空気は暖かい気がしたよ


凍えそうな冬のはじまりに
裸足で歩いていた少女を
そっと撫でてね、
一輪の薔薇をくれて


やがて少女は
あの日の澄んだ海を目指した
泳げると嘘をついた少年と
ひたすら汗を流した


本当は海なんてどうでもよかった

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