冬に近い春にかよう/吉岡ペペロ
 
暁の透明なあたまが働きだすと、ふたせだい前の戦争を、じぶんじしんの真実を、薄暗い霧のなかを、初老が漕ぎ出していった。

吹くかぜが岬あたりの暗い雲を東に追いはらっていた。

冬であるのにかぜには春が充満していた。

みずを含んだ匂い、肌をぬめる柔ら、顔をわたるマイナスイオン、ひかりがほどけていた。

それらが、初老を机に向かわせていた。

暁の透明なあたまが働きだすと、ふたせだい前の戦争を、じぶんじしんの真実を、薄暗い霧のなかを、初老が漕ぎ出していった。





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