朝へ 傷へ/木立 悟
く
花は降り
花は降る
溝に枯れつもり
花は降り
傷が傷に触れては昇り
空は飛べないものに満ち
かすかなかすかな隙間から
やわらかな文字のぞき見る
夜が
夜の川をゆく
水紋は起ち
街をまたぐ
水に話しかけられ
夜は止まる
ふりかえる間に
水の名は増す
眼をつむり 立つひと
雨に似ている
星への坂を
ふたたび歩む
音や熱や息
音や熱や息
見えぬほど小さく刻まれて
夜から朝へのまぶたに撒かれる
退いてゆく
吹雪の似姿
冬は冬へ
つらなる影の裾をひく
うたうとき
手のひらをしるしに浸すとき
光あらう光のなかを
新たな傷は降りそそぎくる
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